かたすみの読書記録

読んだ本の感想記録(少女小説多め)。ときめきと自分の『好き』を探したい。

妖精の庭 薔薇の下で/一原みう

薔薇の下で交わされる秘密。

爵位を従妹に取られ、借金を抱えたメリン伯爵家のヴィクトルは、K男爵より、ある条件を達成すれば、借金の肩代わりするとの話を持ちかけられる。
その条件とは、異母弟・ユリアンの婚約者だった男爵の娘・アンジェリカを大公が待つ帝都に行かせること。
彼女は7年前に亡くなったユリアンとの約束の為、薔薇園のある屋敷に閉じこもっているというのだ。
説得の為、彼女の元へ向かったヴィクトルだったが……。


 
電子オリジナル。
妖精に薔薇を捧げると願いが叶う。そんな伝えがある地方。

このお話は、完璧な貴公子が出てくるわけではなく、応援したくなるようなヒロインもでず、ハッピーエンドなものの、もやっとしたものが残る貴族社会の人間ドラマになってます。

既刊「嘘つきたちの輪舞」収録、短篇「妖精の庭」(ヴィクトルの義理の兄・オレグが主人公)がありますが、物語としては単独でも楽しめます。

ヴィクトルは正直言って、女に手が早く、金を貢いで借金し、酒飲みで、推しに弱い、なかなかに碌でもない男なので、伯爵位継げなくても仕方ないなーと思いますね。
アンジェリカがしっかりもので良かった。

7年ぶりに会ったかと思えば、意に沿わない縁談が待つであろう帝都に行くよう説得しに来る男……。しかも、自分の借金返済の為……。
怒るのも無理はない。

序盤は、淡々としているのですが、7年前、ユリアンが亡くなった時にがあったのか。
ユリアンとアンジェリカの約束とは何なのか?
彼の出生の秘密とは?
あの人の本当の想い人は?
徐々に真実が明かされていく後半と、ヴィクトルとアンジェリカの恋模様の行方に、どんどん読み進めてしまいました。

大元の原因って結局……,この人たち……ともやもやしたものが残るのですが、前作を思うとそれもこの作者らしいなぁと思います。

BOOK☆WALKER