かたすみの読書記録

読んだ本の感想記録(少女小説多め)。ときめきと自分の『好き』を探したい。

おちこぼれ聖女見習いは、引きこもりな元英雄魔術師を連れ戻したい/永野水貴

英雄は何故、孤独を選んだのか。

落ちこぼれの聖女見習いのリシーは、かつて国の英雄と呼ばれ、今は長年、森の奥へと引きこもっている魔術師ヴェロスの元へ訪れる。
上の命を受けて、王都への帰還を説得する為だった。
何人もの人間が説得に失敗してきた通り、彼はリシーの言葉を跳ね除けたが、なんとか館に留まることに成功する。
彼の人となりを知るにつれ、リシーは疑問を抱くようになるのだが……。


 
夢中文庫アレッタ(全年齢)
現在、ピッコマで先行配信中。後々、他の場所でも配信されるのかな?

永野さんの新作、書き下ろしということで、楽しみにしてました。
しんみりとしたほのぼの系かと思いきや、シリアスをどすんと落としてくるの好きですよ。
察しはしていたのですが、急転直下で来るとは思ってなかった。

聖女の才が発現せず、居場所がなかった彼女の支えは、唯一認められた人と話す才と、育ててくれた神官・カナリ。
最初は、恩師の為にと意気込んでいたものの、ヴェロスのことを知っていくつれて、放っておけなくなってしまいます。

一方ヴェロスも、料理や掃除をして居座る今までと違う交渉人のリシーに呆れながらも、少しずつ頑なだった態度を軟化させていきます。
口下手な人なので、相棒の狼・アミルがいなかったら、どうなっていたことか。
感情が昂った時に、敬語が外れるのが好きです。ずるい。

『英雄の魔術師』の真実、そしてそれに向き合い、本心から紡がれるリシーの救いの言葉。
少々、彼の気持ちが唐突に感じましたが、なかなか言葉で示さない人だからな……。
夕焼け畑のシーンは本当に素敵でした。

しかし、待っていたのは運命の皮肉。
これでこうくる!?という展開に、この方の作品だもんなとしみじみしてしまいました。
側にいたいと思っていた気持ちを一気に塗り替えてしまう、苦しみ、葛藤。
でも、いつしかまた変わるのでないかと残される希望。
カナリのその後もあって良かった。

落ちこぼれ聖女見習いは、引きこもりな元英雄魔術師を連れ戻したい|無料漫画(まんが)ならピッコマ|永野水貴 深山キリ